有料老人ホームで医療行為はどこまで受けられる?
高齢になるほど、介護が必要な方は増えてきます。介護が必要な方が増えれば当然、医療が必要な方も増えます。なので、有料老人ホームにおいても、どのような医療体制があるかは施設選びのポイントになります。本コラムでは有料老人ホームで医療行為はどこまで受けられるかについてご紹介します。
医療行為の定義
有料老人ホームで医療行為はどこまで受けられるかをご紹介する前に「医療行為の定義」についてご説明します。
■医療行為とは
医師もしくは医師から指示を受けた医療従事者(看護師・助産師など)に実施することが認められている医療的処置を指します。
■絶対的医行為と相対的医行為
治療など、医学的難度が高く、医師しか実施できないものを「絶対的医行為」、医師の指示があれば看護師などでも実施できるものを「相対的医行為」と言います。有料老人ホームで提供される医療行為は相対的医行為となります。
■介護付き有料老人ホームでは看護師配置はマスト
介護付き有料老人ホームでは必ず看護師を配置しなければならない義務があります。こうした施設では医療行為の必要な方も入居可能ですが、24時間看護師常駐の施設もあれば、日中だけの施設もまだまだ多く、医療行為の充実度には差があるのが現状です。
看護師・介護士、行える医療行為は異なる
次に看護師と介護スタッフができる医療行為の違いについてご説明しましょう。
■看護師が実施できる医療行為
・在宅酸素
・人工呼吸器の管理
・インシュリン注射
・褥瘡(床ずれ)の処置
・痰の吸引
・経管栄養(胃ろうなど)
・中心静脈栄養(IVH)
■介護スタッフが実施できる医療行為
・体温、血圧測定
・専門的判断・技術が不要な一般的な爪切りと耳垢取り、口腔内に付着した汚れの除去
・軽度の表層的な傷・やけどなど、専門的判断・技術が不要な処置(消毒、ばんそうこう貼付、軟膏の塗布など)
・そのほか湿布の貼付、内服薬の内服や鼻腔粘膜への薬剤噴射の介助、目薬の点眼、座薬の挿入など、サポート行為
・ストマ装具のパウチに堆積した排泄物の除去と廃棄
・自己導尿の補助としてのカテーテルの準備、体位保持のサポート
以上のように明確な違いがありますが、近年は規制緩和され、介護職員に認められる医療行為が増えています。上記では「痰の吸引」「胃ろうなどの経管栄養」に関しては、研修と手続きを受けた介護スタッフも実施可能です。
老人ホームで受け入れ難度が高めの医療行為
看護師・介護士、行える医療行為が異なることをご説明しました。最後に、有料老人ホームに受け入れてもらうことがやや困難な医療行為についてご紹介しましょう。24時間看護師常駐の施設がまだまだ少ない現状では、以下の医療行為を必要とする方は入居できる施設が少ない現状にあります。
■インスリン注射
食事前の投与が必要。そのため、看護師の出勤が9時になる施設(滞在するのが日中のみの施設)では朝食前に対応できません。
■痰吸引・鼻腔経管栄養
痰吸引は吸引器で痰を吸引して除去する医療行為。在宅で一般の家族でも指導を受ければできますが、頻繁に必要な方の場合、看護師や訓練を受けた介護スタッフを昼夜問わず施設に常駐させなければなりません。
鼻腔経管栄養は鼻から胃に直接チューブを差して栄養を注入する医療行為で、痰吸引とセットで行われることが多いため、上記と同じく人員配置ができないと、難しいでしょう。
■中心静脈栄養(IVH)
胸の周囲、鎖骨の下あたりにある中心静脈にカテーテルを挿入。そこから栄養輸液を注入して栄養摂取させる医療行為。長時間カテーテルを挿入した状態なので目が離せません。看護師が充分に配置できない施設では提供は難しいでしょう。
そのほか、施設から専門医療機関に週3回送迎しなければならない人工透析もハードルが高いと言えそうです。施設内で対応できない医療行為に対して、外部の医療機関と緊密な提携をしているケースもあります。医療面のケアが充実している介護付き有料老人ホームを日頃からチェックしておくことも、施設選びの上で大切になってくるでしょう。
まとめ
有料老人ホームで医療行為はどこまで受けられるかについてご紹介しました。介護付き有料老人ホームであれば実施できる医療行為でも、人員配置や勤務時間の問題で実施できず、その医療行為が必要な方が受け入れてもらいづらい状況があります。
しかし、医療行為を必要とする要介護の方々が増えていることから、徐々に受け入れ態勢の整った介護付き有料老人ホームも増えてきています。また、介護スタッフが研修を受けることで実現する医療行為も増えています。
介護付き有料老人ホームであれば、はっきり明記されていない医療行為でも施設に問い合わせて話し合うことで受け入れが実現する可能性もあるので、諦めず交渉してみましょう。