年金で足りる?有料老人ホーム入居の資金計画はどうしたらいい?
医療制度の充実や脂肪分が少なく栄養バランスの良い食事のおかげで、日本においては長寿化が進んでいます。それ自体はすばらしいことですが、老後が長期化するということは、それだけ老後の生活費がかかるということになります。本コラムでは有料老人ホーム入居の資金計画について、年金で足りるのか、どのようにすべきかなどをご紹介します。
日本人はどんどん長寿化してきている
厚生労働省が2018年(平成30年)に発表した簡易生命表によると、日本における男性の男の平均寿命は81.25年、女性は87.32年となり、前年比では男性は0.16年、女性は0.05年延びています。
→https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life18/dl/life18-02.pdf
1947年(昭和22年)にはまだ戦争の影響が残っていたせいもあるかもしれませんが、男女ともに50歳そこそこだったことを考えると、たいへんな長寿化です。一体この傾向はどこまで続くのでしょうか。
短命より長命が喜ばしいのは事実ですが、長寿化が続けば老後はどんどん長くなります。そして元気なまま長寿化する方ばかりではありません。
厚生労働省「介護給付費等実態統計月報」、総務省「人口推計月報」の各2019年7月データを元に生命保険文化センターが作成した資料によれば、80歳代前半は約3割、85歳以降は6割の方が介護や支援が必要になります。
→https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/nursing/2.html
しかも介護期間は平均4年7カ月。介護や支援を受けるには当然、費用がかかります。
→https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/nursing/4.html
さらに、年金制度も確実視できないのが現状なので、いままで退職金や年金で充分担うことができた老後資金に不安を覚える方が増加するのも無理もありません。実際「老後破産」される方は増えています。
入居には資金計画が必須
長寿化が大きな老後不安をもたらしていることをおわかりいただいたところで、有料老人ホーム入居の資金計画について考えたいと思います。まずは必要額と年金についてご説明しましょう。
■有料老人ホームの月額利用料金
2014年度(平成26年度)の老人保健事業推進費等補助金資料や野村総研のデータから厚生労働省が割り出した有料老人ホームの月額利用料金の平均は18万9千982円となっています。
→https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000102200.pdf
■対して、年金の月額は…
厚生労働省の2018年度(平成30年度)の年金の月額平均は、厚生年金保険で男性16万3千840円、女性で10万2千558円。国民年金で男性5万8,775円、女性5万3千342円。元気なうちは私的なおこづかいもそれなりに必要なので、年金だけでは足りないことは明らかです。
→https://www.mhlw.go.jp/content/000578278.pdf 29~30ページ参照
■総資産を割り出そう
自分が老後に使える総資産を把握します。預貯金・退職金・現金化できる不動産や有価証券・満期で現金が受け取れる生命保険・車や貴金属など現金化できる身の周り品など、すべてを合計してみましょう。
■今後見込める収入を加算しよう
年金・有価証券の配当金・家賃収入などを加算します。
■自分の希望に適う施設の料金表を参考に必要額を計算しよう
平均月額はわかるものの、個人の希望によって有料老人ホームの費用は千差万別です。自分の希望に近い施設を絞り込み、そこの料金表を参考に計算しましょう。入居一時金が少ないほど月額利用料は高い傾向があります。
■いくつかのパターンで試算
「自立型有料老人ホームに65歳から15年間入居。80歳からは要介護となる可能性が高いため、以降は介護付き有料老人ホームに移り、男性なら平均寿命から考えて5年間ほど、女性なら10年ほど入居する」「できる限り自宅で生活し、85歳から介護付き有料老人ホームに10年入居する」…などと、いくつかのパターンでシュミレーションしてみましょう。
施設入居の資金計画にゆとりを持とう
最後に老後の資金計画に組み込むことで、老後資金を増やすことができるものを挙げておきます。
■できるだけ長く現役で働く
健康な方であれば、70代でも働くことができます。定年後にも会社の嘱託雇用や、再就職で引き続き収入を得ます。在宅ワークも可能です。
■若いうちから資産形成を心がける
個人年金保険など、貯蓄性のある保険への加入、リスクの少ない投資など、若いうちから資産形成を心がけましょう。
■補助金・助成制度が利用できるならする
介護施設の種類、収入額や納税額、介護サービス費の自己負担額などによって国や自治体からの補助金を受けること、居住費や食費などの減免制度を受けることが可能です。詳しくは自治体担当者やケアマネジャーに確認してみましょう。
まとめ
有料老人ホーム入居の資金計画について、年金で足りるのか、どのようにすべきかなどをご紹介しましたが、やはり年金だけでは足りないようです。
そのため若いうちからの資金形成、補助金・助成制度の利用、そして多くの方々がそうされているようにできるだけ長く現役で働くことで、年金頼りにならない老後の資金計画を立てることが大切です。そして、資金計算のためには、早いうちから入りたいタイプの有料老人ホームをピックアップし、必要な入居資金を知っておくことが大切でしょう。